自閉症

発達障害でも「通級」に入れない?療育と就学指導審議会の判断の違い

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以前、『発達障害の子供の就学で「通級による指導」という選択肢を考える』という記事で、長男の就学指導審議会の判断結果を待つことに。

長男は5歳児健診で「自閉傾向」があると指摘され、専門機関を受診したところ「自閉スペクトラム症」という診断結果がつきました。

その後は小学校でおこなわれた就学時健診にはひっかからなかったものの、私の不安感や周囲からの助言もあり、長男が「通級による指導」の権利を得るために就学指導審議会にかけてもらってます。

そしてようやく出た判定結果は、「普通級 入級適」

判定結果の書類を持ってきた教育委員会の人から、

「審議結果としては、通級による指導を受けなくても普通級で大丈夫という結果になりました。説明はこれだけですが、何か質問あればどうぞ。」

と言われました。

主治医や療育の先生、臨床心理士さんたちは声をそろえて長男に対して「通級による指導」をすすめる状況。

なぜこんなにも長男に対する考え方が違うのか、私も夫も手探りの状況でどのような選択をしていくべきなのか、迷いながらも結論に至るまでの気持ちを含めて書いていきます。

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教育委員会から就学指導審議会の結果は「普通級」のみ

長男の就学指導審議会の判断結果は「普通級」のみ。

長男は「自閉スペクトラム症」の診断もついていますが、なぜ普通級という結果になったのか理由を聞いてみたところ、

  • 自閉スペクトラム症の診断があり、目と手の供応動作に低さが指摘されているが、知的発達の遅れはなく、身辺自立ができている
  • 苦手なことに対して困り感を示すものの、他の子供たちとの接し方は自然で、保育所の一斉指導時にも内容を理解し、行動できる
  • 集団行動を乱す場面も見られず、大きな集団でも十分に対応していける
  • 周囲との協調性があり言葉での支持が通ること
  • 自信を持たせる等、周囲からの支援・配慮によって、より成長が促されるものと思う

という状況判断から、普通級で学ぶことが適当であるとのことでした。

 

私と夫は「通級による指導」を視野にいれていたし、主治医や療育の先生などからは「通級による指導」をすすめられていたので、結果はどうあれ通級による指導も選択肢にいれていることを教育委員会の人に話をしたところ、以下の返答が返ってきました。

 

「希望は一応聞きますが、療育に通われているので、それで十分なのではないでしょうか」「通級ではなく普通級にして、サポートとしてもう1人先生をつけてもらうこともできますよ」

「実際に小学校に通ってみて、どうしても何か困ることがあったら、1年生からは無理だと思いますが2年生の時にもう一度申し込んでみてはどうでしょうか」

「親がどうしても通級による指導を1年生から受けさせたいという希望があるならば、自分達で小学校と直接話し合ってみてください」

 

これは就学指導審議会の結果を伝えにきた教育委員会の方の個人的な意見なのか、就学指導審議会としての意見なのかわかりません。

でも長男は慣れている場所での集団活動はできることから、「普通級のみ」でやっていけるだろうという判断になり、「通級による指導」を受けさせることに対してはどうも否定的な様子が伺えました。

就学指導審議会としては、現在の状況であれば集団の中で十分やっていける。

長男の伸びる部分に期待して、まずは実際に頑張ってやってみてから、何か問題があればその時に修正をかけていくだけでも十分というスタンスなのかなと思いました。

 

私も教育委員会の人の話を聞いているうちに「もしかして長男、普通級のみでやっていけるのかも」と思うこともありました。

でも長男を知る臨床心理士さんからは通級を考えることをすすめられていましたし、私としても通級という選択肢を考えていたので、まずは長男の療育の先生ともう一度話し合いの場をもうけて考えることにしました。

就学指導審議会の結果を受けて療育の先生と相談

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療育の先生には、親としては「通級による指導」を考えていたが、就学指導審議会の判断では「普通級 入級適」となったことを伝えると、少し驚いた様子でした。

先生としては、私たちの意見や小学校の通級による指導の話など聞いたうえで「通級による指導」をすすめられました。

先生が「通級による指導」をすすめる理由としては、

「学校ってわからないことを学ぶので、常に毎回毎回頑張っていると誰でも疲れると思うんです。

長男君の場合は「できる・できない/わかる・わからない」の凸凹が大きく、できる部分をみてしまうと、わかっていると勘違いされたり、不真面目にやっていると思われて怒られてしまうこともあると思います。

なので、小学校でよいスタートを切らせてあげるために、最初から楽々にできることがあって「わかる」「できる」を繰り返し積み重ねていって自信をつけていき、念のため通級による指導をつけているけれど、だんだんと本人が普通級だけでいいと思えること・小学校が楽しめることが最終的な目標になるかなと私は思います。」

と話してくれました。

そのため教育委員会の方がいうような、普通級に通っていて、困ったときに通級制度を考えるという方法をとった場合、「わかる」「できる」を積み重ねるのでなく、先に失敗体験をさせてしまうことになるのでオススメできないそうです。

また長男の特徴として、慣れた集団活動の問題は少ないものの、手先の不器用さがあったり、新しいこと、変化のあることや見通しがたたないことが非常に苦手なこと。

また自分が困っている時に自分からうまく発信ができないという面もあるので、小学校という新しい場所では、普通級に在籍していて毎日頑張りながらも、途中にクールダウンできる「通級による指導」という選択肢を残してあげたほうがいいという意見のようです。

 

主治医や療育の先生は、長男に対してクールダウンができて自信をつける場所としてまず通級による指導の権利を持っておく。必要なくなったら、その時に援助を少なく、もしくはなくしていけばいいというスタンスでした。

 

というわけで、長男の就学についての意見が分かれています。

最終結論を出すのは親の私と夫なので、長男にとってどの就学方法がベストまたはベターなのかもう一度話し合うことに決めました。

夫婦で出した結論は「普通級 通級による指導」

就学指導審議会の結果と療育の先生の話、今まで相談した方々の話をすべてもう一度考えることに。

普通級だけでいくことに対しても、普通級に加えて通級に通わせることに対してもどちらにも不安は残りますが、長男の状況と、通級に行くメリットとデメリットを私なりにまとめてみました。

長男の状況

  • 自閉スペクトラム症
  • 就学時健康診断結果 : 異状なし
  • 教育委員会による就学指導審議会判定結果 : 通常学級 のみ
  • 通っている療育の先生 : 通常学級+通級をすすめられている
    ・IQ96(WUSCーⅣ)と知的な遅れはないが、得意なことと苦手なことのバラツキがあるが、保育所内での集団活動はできている

長男の良い部分

  • 「わかる」「できる」「興味のある」ことには一生懸命に取り組むことができる
  • 知的発達の遅れはなく、言語による指示は比較的入りやすい
  • 身辺自立はできている
  • 保育所内では他害などはなく、また友達もいて遊ぶことができている

長男の気になる部分

  • 姿勢を保つことが難しい
  • 「わからないこと」「できそうにないこと」は苦手で、想像する力も弱いため、「わからない」状況の中では行動をコントロールするのが難しく自分なりの方法をとりやすい
  • 目と手の供応動作に低さが指摘されており、字を書いたり、作業をするスピードはゆっくりになる
  • 活動の切り替えが苦手である
  • 会話は一方的になりやすかったり、考え方が白黒思考になりやすかったりと偏りがある時がある

次に「通級による指導」を受けることに対するメリットと、デメリットを考えてみました。

通級による指導を受けるメリット

  • 頑張りすぎたとき、トラブルが起きたときなど、クールダウンすることができる場所になる
  • 先生の実力もあるが、子供の苦手な部分を能力にあわせて少ない人数でじっくり取り組むことができるので、集中できたり、フォローしてもらうことで自尊心が低くなりにくいなどのメリットがある
  • 通級に通うことで「配慮が必要」なことがわかりやすく、他の先生からも理解を得やすい

通級による指導を受けるデメリット

  • 年間通して計画を立てるため、途中でやめるなどの柔軟な対応ができない
  • 授業を抜け出すので、周りの子供やそれを聞いた親から差別などを受ける可能性がある
  • 授業を抜け出すので、その間の授業内容は遅れることがある
  • 本人が通常の授業を抜けることに不快感を感じることがある

あくまで可能性の話なので、実際はどうなるかはわかりません。

長男が今から小学校に入るまでの半年間で成長する部分もあるでしょう。

でも長男の場合は、今の保育所の友達とは違う小学校に通うことになり、知っている友達がまったくいない状況の中で小学校という新しい環境に行くことにより「わからない」ことが多い中の手探り状態でスタートとなります。

現在、保育所内で特別問題は起きていないようですが、それは長男は自分が慣れ親しんだ場所での集団行動は「わかる」し、行事なども少ない保育所に通っているので負担が少ない状況が前提です。

ほとんどのことが「わからない」状態の小学校は、精神的負担はかなり出てくるかなと感じました。

 

そのため長男が問題を抱えたときに逃げることのできる場所の確保「できる」「わかる」など本人に自信を持たせるために、普通級に在籍しながら「通級による指導」を選択。

もちろん今後、「わかる」が増えて安心することで本人の希望で普通級だけでいいという意見がでたり、親として違う選択をしたほうが長男にとっていいのではと思えば、その都度どのような選択をするか本人も含めて一緒に考えていければいいなと思います。

小学校との話し合いを開始

教育委員会の方から「通級による指導」を受けたい場合は、自分で小学校に連絡をとるように言われてたので電話しました。

担当の先生に今までの経緯を説明して、普通級の入級適だけど「通級による指導」を受けたいことを話しました。

小学校側としては、そもそも「普通級 入級適」になっているのにもかかわらず「通級による指導」を希望する親は前例がないようで、小学校の方でも教育員会と話し合いをしたようです。

結果としては、親から希望があるということで「通級による指導」を受けることができるようになり、小学校でも長男が通級に通うために準備をしてくれるそうです。

発達障害の難しさを感じた

「支援級の方が絶対いい」「通級に通った方がいい」「普通級の方が絶対伸びる」など、100人いても100人が同じ答えであったら、きっと私も夫もここまで悩まなかったのかなと思います。

もちろん親としての意見もあるので、まったく悩まないわけではないでしょうが。

ただ私や夫が長男のことを今まで見てきて、座っていられるけれど、姿勢が崩れてしまったり、困ったときに自分からうまく助けを求められないこと。

他の子供達が成長していくなか、長男がまだ成長できていない部分で衝突する部分が多くなることを考えれば、本人はまじめにやっていてるし、考えているけれども怒られることが多くなって、自己評価を落としていくと思います。

そのため「わかる」場所での一斉指導がある程度通るとしても、「わからない」状況の中のはじめの一歩としては「通級による指導」を選択して、少しずつ「できる」を増やしていけるのがベターなのかなと感じました。

とはいえ、色々な人の意見を聞いて、私自身気持ちが固まるまで非常に時間がかかりました。

そして今回、教育委員会の結果を含めて周りの人に対して、長男のその発達障害の部分を理解してもらうのがとても難しいことをひしひしと感じましたし、発達障害に関する考え方は本当に色々あると思います。

この通級をめぐる話し合いの中で、「あのお母さん、過保護だよね」と思う人もいたでしょう。

でも私からみて「わからない」ことが非常に苦手な長男にとって、「できる」ことを増やして自信をつけさせていくことが今はとても大事だと割り切って考えることにしました。

 

この判断でいいのか迷うこともありますが、何度考えても最終的な結論は同じだったので、あれこれ考えずにもう前を向いて進むことにしました。

長男が少しでも楽しく学校に通えるように、その都度考えながら環境を整えてあげられていたらいいなと思います。

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