自閉症

発達障害児の療育からTEACCHプログラムの本質を知る

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Comfreak / Pixabay

我が家の長男は年長の時に「自閉スペクトラム症」と診断がつきました。

今のところ保育所に楽しく通っていますが、長男はたまに完璧主義な部分や、考え方が白か黒しかないような両極端な部分があり、現在は月に1度だけ療育に通わせています。

療育は一人ひとりに合わせて目的や実施内容が異なるので参考になるかどうかはわかりませんが、我が家の長男が通っている病院の療育はどんなことを行っているか、またその効果はどうなのか、療育に通わせる上で大変なことなども含めて書きました。

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療育法の種類は数多くある

あなたが抱いている療育のイメージはどのようなものでしょうか。

子供たちが集まって、製作や勉強、歌ったり踊ったり、おやつを食べたりするなど、幼稚園や保育所の延長のようなイメージではありませんか。

私も療育に通わせ始めたときは「療育って、どこも保育所と同じようなことをやっているんでしょ」と思っていました。

しかし「療育」と一言でいっても、実施されている内容や目的は様々

自閉症の療育法は、TEACCH(ティーチ)プログラム、SST(ソーシャルスキルトレーニング)、ABA(応用行動分析)、RDI(対人関係発達指導法)、PECS(ぺクス)、作業療法、言語聴覚療法、音楽療法、感覚統合療法…など、ほんとうにたくさんの療育方法があるのです。

長男の療育は「TEACCH(ティーチ)」が基本

長男が通っている病院での療育は、TEACCHプログラムが基本となっています。

TEACCHプログラムとは自閉症児の教育や福祉に成果があると注目を集めていますので、療育で使われていることが非常に多いと思います。

自閉症児者に対して,我が国でも高い有効性が確証されている指導教育方法の1つにTEACCHプログラムの「構造化された指導」が挙げられる,

出典:米澤・重松・寺尾(2012)「知的障害を伴う自閉症児に対する構造化された指導の一事例」

TEACCHは「自閉症および関連するコミュニケーション障害の子どもへの対応と教育」といった意味を持ち、佐々木正美先生により日本で紹介されるようになり広まりました。

 

TEACCHではよく「構造化」という言葉が使われますが、たとえば外出先でトイレマークや喫煙所などのマークを見れば、そこがどんな場所か判断できたりしますよね。

電車の時刻表を持っていれば、目的地まで遅れないで到着するには、自宅をいつ出ればいいか逆算できたりしますよね。

もちろんトイレマークといってもカタカナが読める、英語が読める、絵から推測できるなど個々の理解する力は違うし、マークによってはほとんどの人が「トイレ」と理解できないものもあるかもしれません。

ですがその人にとってその場が何をするべき場所かがわかりやすい環境に整えることで、自閉症児でも困らずに自立した行動ができるようになります。

そのため自閉症児の子供の障害特性を変えることに焦点をあてるのではなく、子供を取り巻く環境が「その人にとってその場が何をすべき状況なのか」をわかりやすくなるように整えていくというのが「構造化」です。

 

ただ「構造化」はTEACCHの手法のひとつでしかありません。

TEACCHは病院や学校などでコンサルテーションをしたり、診断や評価、カウンセリングなど、一時的な支援ではなく一生涯にわたった包括的なサービスのことを指しています。

 

そしてTEACCHプログラムの「構造化された指導」は、自閉症児に対して有効性が確証されていると先ほど書きました。

しかし実際は子供の能力や興味を無視し、親が子供を一方的にコントロールするための手段になってしまっていたり、自閉症の特性にだけ目を向けてしまってみんな同じ支援方法になってしまうなど、本来の原則と異なっている場合も少なくありません。

「TEACCH」の療育はどんなことをするのか

長男は民間の病院で年長児の秋から、1対1の個別療育を月に1回、1時間だけ通っています。
長男が個別療育をしている間、私は別室で1時間ひたすら待機。

療育内容はその子供の発達状況や環境だけでなく、療育施設や先生によって内容はまったく異なりますので、あくまで参考ですが、長男がおこなっている療育の内容を以下に書いておきます。

療育のスケジュール

毎回おこなわれている1時間の療育の内容は、このようなスケジュールで動いています。

  1. 所持品始末
  2. スケジュール確認
  3. 自立課題(おべんきょう)
  4. 遊びの時間
  5. 自立課題(おべんきょう)
  6. 対面学習(せんせいと勉強)
  7. 遊びの時間
  8. おやつ
  9. 遊びの時間
  10. 自立課題(おべんきょう)

私は療育の部屋に入ることができず、別室に待機なので、療育の先生に療育の内容を口頭で聞いています。
「構造化された指導」では、1部屋の中をパーテーションで区切り、勉強、遊び、おやつなどのエリアが分かれ、それぞれの場所に役割をもつ「物理的構造化」が設定されています。

そのうえで、上記の1~10番までの内容を書くことで今日何をするかがわかる「スケジュールの構造化」や、自立課題では「なにをどうなったら終わるか」など自分で行動できるための情報が入っている「ワークシステム」、自立課題で左から右へのシステムを目で見える形にしてある「視覚的構造」など、構造化の要素が盛りだくさんです。

もう少し細かく療育の内容を下記に書いていきたいと思います。

所持品始末

療育が始まると、部屋に入る前に自分の「所持品始末」から始まります。

自分で上履きを履く、靴をしまう、コートをかける、荷物を指定の場所に置くなどの自分のことを自分でできるように、靴箱、ロッカーなどには絵とひらがなの書いてある絵カードが貼られています。

保育所や幼稚園でも自分の靴箱やロッカーに、名前のシールやマークが貼っていると思いますが、同じような感じです。

スケジュールの確認

当日の療育の1時間が、どのような流れで行われるのか、全体の見通しが書かれているスケジュールが渡されます。

長男は小さめのバインダーに「にもつのかたづけ」「べんきょう」「あそび」などの絵カードと文字のスケジュールが貼られており、活動が終わるとそのカードを裏にめくって、今どこまで終わって、次にどんなことをするのかがわかるように工夫がされていました。

目で見えるスケジュールを使うことで、見通しを持てるようになり受身的に”指示されたから行動する”のではなく、自分で見通しを持ち考えて行動できるようにといった目的があります。

自立課題の取り組み

自立課題では、誰かに頼らずに、自分一人で最初から最後まで解決する課題がおこなわれます。

保育園や幼稚園、小学校で椅子に座って自分で製作したり、勉強したりするイメージに近いでしょうか。

長男の場合は、「同じ色のシールを貼り合わせる」「見本とおんなじ形を作る」「書かれている数字と同じ課題をとってくる」といったマッチングの課題です。スキルアップではなく本人が最後まで課題を終わらせることで「自分でできる」という達成感を得ることが大事だと言われました。

このように最後までできる課題を繰りし、簡単に「できる」「わかる」を積み重ねていくことで、なにをすればいいのか、どのくらいやるのか、活動が終わったら何をするのかといった活動の進み方を学んだり、いつも同じ手順を踏むことで、物事は左から右へ(文字や数字が書かれていたり)という、物事のシステムを理解して、自分で情報を読んで試行錯誤する力を育てていく目的があります。

あそびの時間

スケジュールの中に、何回か「遊び」の時間が入っていますが、この時は先生と一緒に遊ぶのではなく、トランポリンやしゃべるレジスターなどの色々なおもちゃなどから自分で選び、一人で遊びます。

長男はトランポリンが比較的好きみたいですが、感覚統合にもよいとされています。

対面学習

人からの指示や介入が苦手で、自分流に取り組みたくなる子供には「対面学習」が必要だと言われました。

長男の場合、人よりも活動自身に注意が向きやすく、自分のペースややり方で取り組んでしまうため、人と適切に場を共有すること困ったときにも他者に適切に発信することの練習をしています。

長男は自分の興味がないことに関しては、無意識のようですが、あくびをしたり、一方的に喋ったりするということが見られると先生から指摘がありました。

療育で長男の「困り感」は理解しやすくなった

「TEACCH」は有効性が高いと言われていますが、我が家の場合は療育を開始してから数回なので、長男がこんなふうに変わったといった変化はみられていません

今後は長男にどのように変化したのかは追記していきたいと思います。

ただ長男は「自分流になりやすい」「興味のあること(できる)、ない(できない)ことの差がある」などの特徴を、療育の先生からきちんと教えてもらえたことで、私も夫も「あー。そういうことなんだ」と長男のことを理解しやすくなりました。

 

また家では白黒思考になりやすいのか「できない=自分はダメだ」となりやすいため、なかなかスモールステップがうまくいきませんが、「少し難しいことでもよく考えることで乗り越えられる」という体験を療育でしてもらえることはとてもありがたいです。

療育の通い続けることの大変さ

療育に行き始めてから、私や夫は子供に対して色々な気づきを得られました。
また長男も喜んで通っていますが、民間病院の療育は1回行くと1万円かかります。

そして私が住んでいる地域には療育を行っている施設がないので、隣接している市の病院まで片道30分以上かけて通っています。

またこの民間の病院は、長男が療育で実施している内容を聞いたり、長男のことも含めて他の子供について相談したいことがあっても、別の日を電話予約する必要があるのですぐには対応してもらえず、その相談も別途1回1万円かかるのです。

長男の療育で月に1回で1万円、その療育の内容を聞く+親の相談やアドバイスをもらうのに月に1回で1万円かかり、毎月合計で2万円の出費と交通費がかかりますので、金銭的負担は大きいです。

また療育の日も土曜日はほとんど空きがないため、平日に長男の保育所をお休みさせたりと予定を組むのが大変な部分があります。

やはり自分一人で長男や子供たちのことでつまづいた時に相談できる場があるのは、気持ち的にも心強いです。

療育について知識が不足していたことに気づいた

「療育について、どこも同じようなことをやっているでしょ」と思っていましたが、実際は療育方法も多種多様だし、施設によっても受ける人によっても対応が全然違います。

またTEACCHの有効性は認められていますが、前に自閉症の講演会で「療育方法もさまざまですが、試してみて効果がないなと思えば、他の方法を試せばいい」と述べられていた人がいたので、療育は方法にこだわるのではなく、子供をしっかり見る必要があるんだなと今さらながら理解できました。

今まで「TEACCH」や「構造化」と言われると、なんとなく絵カードやスケジュールを作っておけばいいのかなと思ってました。
でも本人に必要かどうか、またはわかりやすいかどうかを気にして、何度でも実践しては評価して、また再実践の繰り返しをまったく理解していませんでした。

現在は療育についていろいろと調べていて、知識不足だったことがわかったので長男に対してどのように環境を整えていけばいいのか悩んでいますが、まずは成功している事例などを本で学び実践していこうと思います。

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